プレスラボおせち:芥川龍之介
プレスラボが毎年お送りしている年賀状コラム。今年のテーマは「プレスラボおせち」です。各メンバーがご用意した、お正月を彩るおせちのようなコラムをお楽しみください。
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あけましておめでとうございます。プレスラボ12年目の山本です。好きなタイプは「賢くて美的センスあって、ビジュアルがオダギリジョーめいてるミステリアスな人」です。そうです、芥川龍之介ですね。
芥川龍之介を知ったのは、小学生の頃。図書館の青い鳥文庫の棚で、なんとなく『杜子春・トロッコ・魔術』を手に取ったんですよね。『杜子春』は難解やったけど、『トロッコ』にどハマりして、その後に読んだ『魔術』。これまで読んできた児童書とか絵本とは全く違う世界観で、なにこれ、やばい、マジでやばい、すごい本見つけてしまったと思いつつ、家に帰ってから「どんな人が書いてるんやろ」と思って偉人図鑑を見たんですよね。そしたら、そこにいたのが彼でして。
一目惚れ。完全に一目惚れのそれ。かっこよすぎん? なにこれ、そんなことある?
そこから、青い鳥文庫で短編集を読み漁りました。学校の図書館は読み尽きて、区の図書館に移動、先生からは「読書家で偉いね」みたいなこと言われたけど、違うんですよね。とにかくドストライクで、写真集とかCDとか出してないから、本読むしかないじゃないですか。
死んでる作家推してしまったとき一番悲しいのって、出してる作品に天井があることですよね。やがて芥川を読み尽くしてしまって、しょうがないから芥川が崇拝してたらしい人の本でも読むかな、と思って漱石読み始めて。あと芥川に憧れてたらしい太宰って人も読んどくか、しょうがないから同じ時代に生きてた人の本でも読むかって感じで、完全に芥川起点で私の読書は広がっていくわけです。
なんで芥川が私の心を掴んで離さないのか、偏愛を寄せる芥川について、ちょっと語らせてもらっていいですか。
ビジュアルがドストライク
文士でかっこいい人って多いと思うんです。王道イケメンの萩原朔太郎とか、かわいい系イケメンの中也とか。飄々とした感じの太宰とか渋い川端がタイプって人もいるはず。
けど、一個だけ言わせて。芥川、無造作ヘアすぎ。和服似合いすぎ。こっち見て微笑んでるん、なんなん。流し目、なんなん。全部いいんやけど、なんなん。お抱えのカメラマンでもおったん。あとさ、麦わら帽子でタバコ吸ってる動画あるんよ。なんなんその組み合わせ。狙ってんのか。
ギャップ萌え
最後が服毒自殺やったから、ネガティブな要素強めで語られることも多い気がするんですよね。そのせいで、とっつきにくくて暗いやつみたいに思われてないか不安です。
麦わら帽子でタバコ吸ってる動画の続き、子ども追いかけて木登りしよるんよ。和服に草履で。ほんで、軽々屋根に登るんよ。ヤバない? ギャップ萌えすぎん?
あと、漱石のことめっちゃ好きなんもかわいい。先生先生って呼んでるんもかわいい。ちなみに芥川、友達めっちゃおるから。随筆で友達のことめっちゃ書くから。息子ズのこともしょっちゅう書いてるから。そんなギャップ萌えも全部かわいい。なんなん自分、とっつきにくそうに見えて、全然そんなことないやん。それか、あれなん? 仲良くなったら心全開にするタイプなん? 猫かい。かわいいの権化かい。
頭がいい
「幼い頃から秀才」で「賢すぎて入学試験免除」、最終学歴は「東大の英文卒」。ほんで芥川、海外文学を日本流にアレンジして出したりしてるんですよね。まぁ、頭良くないとできんわな、みたいなことサラッとしてるんですよね。
で、ここで一旦、みんな一個うえの章読み返して。その秀才が、子どもとキャッキャ言いながら木登りしとるんよ。ギャップ萌え高まるよね。
シティボーイ
東京の両国で育った芥川。都会っ子やから、子どもの頃から当たり前に都会で遊んでて。地方出身の私からすると、その時点ですでにかっこいいんですよね。現世やったら原宿とか渋谷とか行ってたんやろな。
『本所両国』で、高校時代に友達と遊びに行った帰り、亀戸天神の船橋屋で買い食いしたみたいな話を書いてて、そんな都会っ子エピソードも非常に良い。昔はもっと安かったんやで、みたいなこと思ってるんも地元っ子すぎて好き。あと、買い食いするとかまじ親近感。「俺、船橋屋の葛餅食べたいんやけど」「ええやん行こや」「お前ほんまアレ好きよな」みたいな会話したんかな。関西弁じゃないやろけど、したんやろな。してたらいいな。ちなみに、学校の授業抜け出して船橋屋の葛餅食べに行ったこともあるらしい。エピソードえぐいって、狙ってんのか。それで頭いいとか、アニメか。二次元か。あと葛餅好きすぎやろ。
センスいい
「芥川 絵が上手い」とかで検索してみてください。ほんまセンスの塊。落書きすら上手い。学生時代、ノートの端に書いた落書きに絵のうまさが滲み出てもーてる男子おったらどうなる? そんなん好きなるやろ。それクラスメイト誰も知らんくて、自分しか知らんかったらどうなる? 人生レベルで狂わされるやろ。
しかも、妖怪好きで妖怪の絵ばっか描きよるねん。大人になっても河童の絵とか描いてるねん。なんやねんそれ、謎かわいいか。
語り出すと止まらんのやけど、推しの魅力が少しでも伝われば嬉しいです。作品読みたくなるよね? 「俄然推せる。学校の授業でしか読んでなかったわ、迂闊やったわ」という方には、手始めに『河童』『芋粥』『魔術』『蜜柑』あたりがおすすめです。もっと沼りたい方には『煙草と悪魔』、動物が好き、もしくは子どもと一緒に読めるやつなら『白』、ただし『白』は一部えげつい表現ありなので、ちょっとなーと感じる方には鉄板の『トロッコ』を推させてください。全部青空にあります。せめて課金させて。