「起きたら2032年の世界だった」
2022年、プレスラボの仕事初めは1月11日。年末年始休暇は12月25日からと実に17日間にも及ぶ。1ヶ月の半分以上休み! なんというホワイト企業感。ふふっ、長すぎだよ。でも、いつもコツコツがんばってくれているメンバーに、たっぷり休息をとってもらい、新たな年も元気に取り組んでもらいたいから、これでいいのだ。
私はプレスラボの二代目社長、池田(@sonokoikeda)。2022年に36歳を迎える年女。元旦の今は大阪で暮らすパートナーの家でゴロゴロしている。「元日に当直なんだよね」と平常運転な彼を送り出し、まっ昼間から気兼ねなくひとり飲みを楽しむぞー! ネトフリ三昧だー! まったく、いい身分だなあ、自分。
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「その子さん、その子さん……?」
穏やかな彼女の声に呼ばれて飛び起きる。どうやらオンライン会議中に寝落ちていたようだ。一体何やってのよ、自分。
「あー、はい」
画面を二度見、三度見した。
「えっ、え?」
私を呼んだのはプレスラボに3年ほど勤める20代後半の女性メンバーF。気が利いて、仕事が早く、細やかで、ずいぶんできた人物である。
画面内に彼女と瓜二つなメンバーが数人いる。なにこの状況。私は夢でも見てんの? 瞬きを繰り返してみたが状況は変わらない。こめかみ付近をぐりぐり押すと痛いからどうやら現実らしい。
室内を見回すとカレンダーが目に入る。「西暦2032年」。どうやら10年後の世界に転生してしまったらしい。転生に対する動揺よりも、安易な転生シチュエーションに苦笑するよりも、10年後もプレスラボが存在していることに安堵する自分がいた。うちに依頼をくださる方々と社員のおかげよね……と手を合わせた私を“Fたち”がほとんど同じポカン顔で見つめている。
「Fさん、何の話だっけ? さっき急ぎの連絡がメールで来て、そっちの対応してて。ごめんね」
怪しまれないよう適当な理由で謝って、状況を探ることにする。みんな同じ顔だから、とりあえず画面上部端にいる、先ほど私に話しかけてきたFに視線を合わせる。
「えっ、メールですか?」
Fは怪訝な顔をした。2032年はメールなんて使わないの? ていうか、10年後の私は46歳で、彼女は20代後半だから20歳くらい年下ってこと? そりゃ月日も流れるわ……。なんかついていけない。私の一方的な焦りを知ってか知らずか、Fは続けた。
「その子さん、いつの時代の話をしてるんですか。“F社長”が呆れてますよ」
え? どういうこと? 社長って私じゃないの? 画面を凝視すると、私に話しかけてきたFの下にいるFが、ひとりだけ退屈そうに伸びをしていた。“このF”が社長らしい。
どうやら私は2032年の世界では、一社員なのか、会長なのか、意見役なのかわからないけれど、社長という立場ではなくなっているようだった。確かに、Fは私なんかよりはるかに優秀だもんな。Fが社長になった方が正解なのかもしれない。
でも、それはさておき、私はどんな流れで退任したの? 「古い人間」になって、使えなくなって追放されたのだろうか。それはイヤ。「古い」なんて思われたくない——。「古く」なんてなりたくない——。
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「その子さん、その子さん……?」
穏やかな彼の声に呼ばれて飛び起きる。どうやら元日のまっ昼間からひとり飲みをして、映画を観ながら寝落ちていたようだ。一体何やってのよ、自分。
「また寝言言ってたよ。『更新するからあっっ! 古くなんてならないからあっっ!』って叫んでた。去年の4月かな、明け方4時過ぎにその子さんが『行ってらっしゃい! 気をつけて!』って滑舌良く叫んで、僕が起こされたっていう笑い話あるじゃん。あのとき並みにハッキリした言い方だったよ」
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2022年、明けましておめでとうございます。昨年もお世話になりました。プレスラボに数多くお寄せいただく新規のご依頼、継続のご依頼、本当にありがとうございます。
弊社及び弊社のメンバーを頼りにしてくださるパートナーの皆さま、弊社の業務を受けてくださるクリエイターの皆さま、そして弊社メンバーのおかげで、プレスラボは2021年、前年よりもより良い内容で、営業活動をすることができました。
2022年も皆さまのお役に立てるよう、また、さらなる成長を目指し、精進してまいります。「転生小説もどき」の駄文に書いたように、会社としても個人としても、「更新」し続ける気持ちを忘れず、事業と向き合っていく所存です。
新たなお仕事、長く続いているお仕事——それらを通じてさまざまなご縁が生まれ、貴重な機会をいただけていることを心から感謝しています。
本年もどうぞよろしくお願いします。皆さまにとって素晴らしき1年になりますよう願っています。
株式会社プレスラボ
代表取締役
池田園子
2022年1月1日