エッセイ ライティング講座 #仕事実績紹介
こんにちは、プレスラボの池田(@sonoko0511)です。このnoteではプレスラボが手がける仕事を不定期で取り上げます。
今回ご紹介するのは、弊社が5月から実施している「オーダーメイド ライティング講座」の中で開講した「エッセイ講座」です。
オーダーメイド ライティング講座はその名の通り、生徒さん一人ひとりが必要な課題に取り組む講座です。講師との打ち合わせを経て、課題を決めて共に進めていきます。
本講座を告知してから、お問い合わせをぽつぽつといただく中で、こんなご要望をいただきました。
「Webにエッセイをアップしているけれど、自分の感情のままに書いているだけ、だと認識している(=半径1mくらいの範囲でしか書けていない気がする)。自分に起きた出来事を語りつつも、社会的なテーマを折り込んで、メッセージ性のある内容を書けるようになりたい」
その方と打ち合わせをした結果、こんなオーダーが浮かび上がりました。
・エッセイやコラムの実績がある女性に講師を依頼したい
・初回はエッセイやコラムの書き方を講義形式でレクチャーしてほしい。それを受けて「課題」(=noteにUP予定のエッセイ執筆)に取り組みたい
講師候補のひとりとして思い浮かんだのが、エッセイストの中前結花さん(@merumae_yuka)でした。中前さんは『ほぼ日』や『DRESS』『おうね。』などさまざまなWebメディアで、色鮮やかで繊細なエッセイを発表しています。
中前さんを含む講師候補を3人挙げたところ、講師は中前さんに決まりました。生徒さんは中前さんの講座を2回受講して、その中でみてもらった原稿をnoteにアップ。そのnoteが注目され、新たな仕事も舞い込んできたといいます。
今回、中前さんの「エッセイ講座」のこと、中前さんがエッセイを書くとき大事にしていることなどを伺いました。
生徒さんが「思いきって飛び降りる」きっかけをつくる
——初回は「エッセイの書き方を教える」レクチャーをしていただきました。レクチャーをするにあたり、工夫したことを教えてください。
気をつけたのは「出し惜しみ」をしない、ということでしょうか。
わたしもまだまだ勉強中の身で、活動をもっともっと広げていきたい立場です。ともすればライバルとして「ここまで共有してしまっていいのだろうか」ということもありますし、なによりも「エッセイ」に正解はないので、「“こうするといいでしょう”だなんて、言ってしまっていいものか?」という葛藤はありました。
ですが、書くネタの棚卸しや、構成の考え方の起点を揃えたところで、「同じ文章」が出来上がってしまうことなんてあるはずもなく。
「こういう順番に考えるとやりやすいかもしれません」「わたしはこんなふうに決めています」ということは、惜しみなくお伝えして、そこから出てくるものを一緒に煮詰めていく体験に重きを置きました。
——私も資料を拝見し、ここまでシェアしてくれるなんて、と感動したのを覚えています。続く2回目は、生徒さんが書いたエッセイを添削する、という実践編でした。添削/オンライン指導レクチャーをするにあたり、意識したことを教えてください。
まずは「形にしてみる」という第1ステップに取り組んでいただきました。
読み終わったあと、すぐに添削するのではなく、初回レクチャーの資料を再度お渡しして(その資料のキーテーマでもあるのですが)「もう少し、飛び降りてみましょうか!」ということをお伝えしました。
そして、再度上げていただいた原稿を添削させていただいたのですが、本当に驚きました。とても内容が深まっていて、おもしろくなっていて……。軽微な修正で、完成することができました。
「読む人が知りたいのは、この部分の詳細かもしれませんね」ということを一緒に議論して、アップデートできたのがよかったのかもしれません。
その内容を(そのまま)noteに投稿いただいたところ、多くの反響があり、他のお仕事にもつながった、と嬉しいご報告もあり。わたしもとても嬉しかったです。
——私もTwitterにそのエッセイのURLと感想を投稿したら、Twitterをしている私の母から「いいエッセイだった」とリアクションが来ました! そして、note公式Twitterでも紹介されていましたね。
公式にピックアップされていたの、すごいですよね! 一度そういった体験ができれば、きっと「飛び降り方」は掴むことができるような気がしていて、それは以前わたしもそうでした。今後も、執筆を続けていただきたいなと思います。
——私も生徒さんの次のエッセイ、早くも読んでみたいです! さて、中前さんといえば、普段はエッセイを書く側で、講師としての活動は初だったと思います。人に教えるという体験をして、どんな感想を持ちましたか。
「講師」としてお話をいただいて、仕事として引き受けておきながら、やや失礼かもしれませんが、「いい文章ってなんだろう?」ということを一緒に考えて、わたしも一緒に学んで、すこしでも満足できるものを書いていただけるように並走できれば、という想いがありました。
「書くこと」を体系立ててここまで考えたことがなかったので、実際にレクチャーにあたって資料を作るのも、授業をつくるのも、わたしにとっても本当にいい勉強になりました。「普段、こんな順番で考えていたのか」など、自分自身に驚くこともたくさんあって。
最終的な成果物として、生徒さんのエッセイがひとつ完成したときは、その気持ち良さをたくさん分けていただきました。
エッセイを読んだ人をどこかに連れて行けるか
——エッセイストとして、ご自身が普段エッセイを書くときに大事にしていることや決まりごとがあれば教えてください。
「書くため」だけにやっていることではないのですが、手書きでつけている「日記」は、たまに書き物に役立つことがあります。
「こんな言葉を聞いた」だとか「どうして“素敵だなあ”と思ったんだろう」とか、そういったことをだらだらと書き連ねているだけなのですが。
書き終わったあとに、必ず確認していることはあります。読者の方は、せっかく忙しい中、誰とも知らないわたしの文章を読むことに時間を使ってくれているわけなので、「どこかに連れていけるような内容になっているか」ということは常に考えるようにしています。
読む前と読んだあとで、なにか大きな違いがあるかはわかりませんが(きっとないでしょう)わたしの書いたものを読むことで、一瞬でも、予定していなかったところに「ふっ」と連れ去られるような体験になれば、というのが願いで、そうなっていれば嬉しいです。
——私も、中前さんのエッセイを読んで、いつも連れ去られる感覚があります。ショートトリップしている感じといいますか。映画を観るよりも短いけど、確かに没頭していて、気づいたら旅をしてるんですよね。
嬉しいです。ありがとうございます。
——個人的に、今でも特に強く印象に残っているのは『DRESS』連載で読んだ「いつもミスチルを聴いていた。」です。ご自身にとって、現時点で「代表作」といえる作品はなんですか。
2019年に「DRESS」さんで書かせていただいたものですね。ありがとうございます。もっとたくさんの反響をいただいたものは他にありますが、わたしが「なにか、ひとつだけ読んでもらう」としたら、同じく「DRESS」のこちらの記事です。
星野源さんの曲『恋』と自身の思い出について書いているのですが、SNSではシェアだけじゃなく、たくさんのDMをいただいたんです。
自分の思い出を書いているだけなのに、なぜかその人たちはみなさん「初めて、誰かにわかってもらえた気がしました」と言ってくださって。
最初はとても不思議な気分でした。ですが、今は「ああ、そのために文章を書いているのかあ」と思えています。
「わたしだけの特別な体験」を知ってもらいたいわけではないので、エッセイとはそういうことなのかもしれないな、と教えてもらった記事でした。
——エッセイに自分の記憶や思い出を重ねて、当時の自分の気持ちを想うことがあります。自分にとっていいエッセイって、そんな状態へと誘ってくれるんですよね。最後に、「エッセイに関するライティング講座が気になる」という方へ向けて、中前さんの講座を受けることで、どんなモノを持ち帰ることができるか、教えてください。
わたし自身がこれまで「試したこと」や「構成を考えるときに見つけた、ちょっと楽な方法」などはたくさん共有させていただくのですが、一方的な講義形式ではありません。
「書き出すテーマはどんなものが良いだろうか」「どういう人に宛てて書くのが理想だろうか」「書き手の方(生徒さん)の魅力ってどんなものだろうか」ということを、具体的な例を挙げつつ一緒にイメージを膨らませながら、「その人に合うもの」を話し合って決めていくような形式をとっています。
「書いたことのない人」や「書いてきたものの感想が欲しい」「新たなテーマを考えたい」といった方にとっても、「一緒に考える話し相手」として、お役に立てるのではないかと思います。
——中前さん、ありがとうございました! 次回も弊社の仕事実績をご紹介します。
講師プロフィール
中前 結花(なかまえ・ゆか) エッセイスト・ライター。兵庫県生まれ。現在は、読みものメディア『minneとものづくりと』の編集長と、『ほぼ日刊イトイ新聞』『DRESS』ほか多数の媒体でエッセイの執筆や、ブランドのボディコピーなどを担当。蚤の市と本を買うこと、J-POPの歌詞とお笑いやドラマの台詞を覚えるのが好き。
https://twitter.com/merumae_yuka
https://www.foriio.com/merumae
https://note.com/meruco